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A. スギやヒノキなどの植物の花粉に対して体が引き起こすアレルギー反応です
症状はくしゃみや鼻づまり、鼻水の他、目やのどのかゆみ、目やにや涙が出たり、湿疹や皮膚炎が起きたりすることも。命にかかわる重篤な病気ではないものの、毎年数カ月に及ぶ花粉の飛散時期は継続的に症状が続くため、体の負担となるだけでなく、集中力や注意力が低下し、日常生活の質を下げてしまいます。
花粉症とかぜを見分けるには?
くしゃみ、鼻水、鼻づまりは、かぜでも同じ症状が見られます。見分けるポイントを覚えておきましょう。
チェック
A. 戦後、全国規模でスギが植林されたためです
日本で初めて花粉症が確認されたのは、1960年代のことです。61年にブタクサ花粉症が、63年にスギ花粉症が報告されました。その後スギ花粉症は、70年代後半から急激に増加しました。2008年の全国調査からは、およそ4人に1人がスギ花粉症であると推定されます。これほどスギ花粉症が猛威をふるっているのは、世界でも日本だけです。
もともとスギは日本に古来からある植物ですが、木材や治水の利用を目的に戦後多くの山々に植林され、人工林が爆発的に増えました。それらのスギの樹齢が、花粉を多く生産する30年を過ぎた頃から、過去にない量の花粉が飛散し始め、現在もそれが続いています。都内で観察されるスギ花粉の飛散数を見ると、最近10年の平均飛散数は、それ以前と比較して約2倍に増加しています(下図参照)。
スギの伐採や、別の樹木に植え替えをするなど花粉症対策は進められていますが、人工林の齢級※を見る限りでは、これから10年、20年先もこの状況に変化はないといわれています。年々夏期の気温が上がっていることも、花粉の増加に拍車をかけています。
また、森林が多いエリアよりも都市部で花粉症を発症する人が多いのは、大気汚染がアレルギー性鼻炎の発症要因になっているためとされています。さらに、現在の日本のように過度に衛生的な環境も、アレルギー疾患の増加を起こす一因と考えられています。
※樹木を齢によって分けた階級のこと。
A. 花粉に反応する体質かどうかによります
花粉症のようなアレルギー反応には、体内の免疫機能が関係します。免疫とは、体内に外敵が入った時にそれを退治するための抗体という〝武器〟をつくる仕組みです。この免疫が正しく働くことで体の健康が守られているのですが、時折、外敵を排除しようとする反応が過剰に起きてしまうことがあります。これがアレルギー反応です。反応が起きるかどうかは体質によりますが、一度反応が出てしまうと治ることが少ないのが特徴です。
花粉症の場合は、体が体内に入った花粉を外敵と見なし、排除するために、アレルギー反応を引き起こすIgE(アイジーイー)抗体をつくることから始まります。花粉が体内に入るたびに抗体が増え続け、やがて一定量を超えると、体内にヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、それらが鼻や目の粘膜に作用して鼻水やくしゃみといった症状を引き起こします。
ある調査※によると、都会に住む20代前半の73パーセントにIgE抗体の陽性が見られました。陽性であれば、今は花粉症を発症していなくても、いずれ一定量を超えた時に発症する可能性があります(コラム参照)。
※国立成育医療研究センターや東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科などが行った調査。
花粉症のメカニズム
❶花粉の吸入
鼻や目、口から花粉が体内に入る。
❷IgE抗体の生成
鼻や目の粘膜などで、花粉に反応してIgE抗体がつくられる。IgE抗体は肥満細胞※に結合し、体内に蓄積する。花粉が入ってくる度にIgE抗体がついた肥満細胞は増える。
❸ヒスタミンなどの放出
IgE抗体がある一定量まで増えると、肥満細胞はヒスタミンなどの化学伝達物質を放出する。
❹花粉症症状の出現
ヒスタミンなどの化学伝達物質に鼻や目の粘膜が反応し、症状が現れる。
※「肥満細胞」とは、肥満している人に多いわけではありません。ヒスタミンなどのアレルギー症状の原因物質を蓄えて、大きく膨らんでいるために名づけられた細胞です。
A. 冬から飛び始めて春にピークを迎えます
スギ花粉の飛散時期は、関東ではだいたい2〜4月末頃です。花粉をつくる雄花は夏に生長し、冬を越して気温が高くなり始めると開花して、花粉が飛び始めます。雄花1個につき40万個もの花粉が入っています。
夏の気温が高く日射時間が長いと雄花が大量につくられ、翌春の飛散量は多くなります。また、年明けの気温が高いほど、花粉の飛散開始時期は早くなります。さらに多く飛んだ翌年は、量が減る傾向にあります。
このように花粉の飛散量は気象条件と密接に関係があり、毎年変わるため、年によって花粉の飛び始める時期や量はかなり異なります。
例年立春の頃から徐々に増え、バレンタインデー辺りから顕著に飛散し始めます。しかし、立春前に一気に大量の花粉が飛ぶ年もあれば、飛び始めが遅れたり、2月中はほとんど飛ばず、3月に花粉の飛散が集中する年もあります。開始時期や期間が異なるだけでなく、ピーク時の飛散量も、年によって10倍の差があります。
スギ以外の花粉症原因植物
ヒノキ
国内ではスギに次いで植林面積が広い。スギ花粉の飛散時期終了後にも症状が継続する場合に、原因として疑われる。西日本に多い。
イネ科植物
晩春から夏にかけて、草地や道端などに生育するカモガヤ、オオアワガエリ、ハルガヤなどのイネ科の植物が花粉を飛散する。
ブタクサ・ヨモギ
秋に草地や道端、畑、林のへり、垣根などに生育するブタクサやヨモギなどが花粉症の原因となる。
スギ・ヒノキ花粉の年間飛散量の変化
A. 症状が出る前に始めましょう
花粉症によるアレルギー性鼻炎は、一度症状が出てしまうと鼻の粘膜がどんどん敏感になり、症状が強く出やすくなってしまいます。症状が出る前から薬をのむなどの対策をとり、粘膜を過敏にさせないようにしましょう。
基本的に薬は症状が出た時に使うもので、予防としては使いません。しかし、花粉症については他の病気と異なり、毎年同じシーズンに症状が現れることが分かっていて、原因もはっきりとしています。そのため、薬による初期予防治療が認められています。花粉症のシーズン前に薬をのみ始めれば、発症を遅らせたり、軽い症状で抑えたりすることができるのです。
以前は、2〜3週間前から薬をのみ始めるとされていましたが、現在は薬が改良され、約1週間前からでも間に合うようになりました。花粉情報をこまめにチェックし、飛散時期が来る前に診察を受け、症状に応じて処方してもらいましょう。
スギ花粉は2〜4月がシーズンですが、ヒノキは3〜5月、イネ科やブタクサなどは初夏から秋と、1年を通じて様々な花粉が飛散しています。スギ花粉の飛散時期以外にも症状が出る場合は、アレルゲンを特定する検査を受けるとよいでしょう。
初期治療(予防)の効果
花粉情報をこまめにチェックしよう
テレビニュースや新聞の他、インターネットの花粉情報サイトも有効。
A. マスクとメガネの着用や住環境の工夫です
花粉症治療の基本は、できる限り花粉を体内に入れないよう工夫する、セルフケアにあります。薬だけに頼らず、少しでも花粉から身を守りましょう。
最も有効なのは、マスクやメガネを用いて物理的に花粉が体内に入り込むのを防ぐ方法です。顔にフィットして隙間がないマスクを着用すれば、それだけで花粉を吸い込む量を6分の1まで減らすことができるとも。顔のサイズに合った立体型の花粉症用のマスクを選びましょう。また、目のかゆみが強い時は、花粉症用のメガネを使うのもおすすめです。
また、花粉の飛散時期は洗濯物や布団を屋外に干さない、窓を極力開けないようにし、室内への花粉の侵入を防ぎましょう。さらに加湿器を用いて適度な湿度を保てば、粘膜の保護や花粉の舞い上がりを防ぐなどのメリットもあります。規則正しい食事や睡眠を心がけ、免疫力の低下を防ぐことも大切です。
セルフケアの方法